• 前立腺がん

1100例以上の前立腺がんに高精度放射線治療を行っています。回転強度変調放射線治療(VMAT。IMRTの発展型)による【通常分割法と体幹部定位放射線治療(ピンポイント照射)】は2週以内に、【小線源治療】【トリモダリティ治療】も待たせることなく開始可能です。がんの部位や正常臓器との距離に応じて放射線量に強弱をつけているのが当院の特徴です。前立腺がんを含めたからだの状態や患者さんの考え方に応じて最適な治療法を決定します。

前立腺がん 目次

I. はじめに

II. 当院の治療法と照射技術

1. 治療法

2. 照射技術

- 1. VMAT【回転強度変調放射線治療:IMRT(強度変調放射線治療)の発展型】

- 2. IGRT【画像誘導放射線治療】

- 3. 小線源治療

III. 前立腺がん治療の概説

1. 進行度の把握

2. 各進行度での治療法

3. 各治療法の比較

- 1 通常分割法

コラム:粒子線治療【陽子線治療、重粒子線治療】

- 2 SBRT(体幹部定位放射線治療)

- 3 小線源治療【トリモダリティ治療含む】

- 4 治療成績の比較

- 5 副作用とQOL(quality of life, 生活の質/満足度)

- 6 比較のまとめ

4. 治療機器の比較(リニアック、Vero、トモセラピー、サイバーナイフ)

5. おわりに

目次

図3

実際に照射するための、狙いを定める照射技術です。当院では治療時にCTを撮影することで、日々の前立腺位置を合わせて正確に照射しています。施設によっては、事前に針で金マーカーを前立腺内に刺して位置を確認しますが、わたしたちの施設では用いません。

左:図3


1. 進行度の把握

※ T分類:触診と画像から判断される、前立腺局所における前立腺がんの広がり
# グリソンスコア:生検で得られた病理組織上の前立腺がん細胞の悪性度
* PSA:正常の前立腺細胞と前立腺がん細胞から産生される物質
前立腺がんの発見や治療効果判定に用いる
$ PSA密度:PSA値を前立腺の体積(ml)で割った値
δ 遠隔転移:骨盤リンパ節以外の臓器への転移
表1.NCCNリスク分類(Version 2.2016)に基づく進行度

前立腺がんと言っても進行度によって選択し得る治療法は異なり、医師は各種検査で患者さんの進行度を把握してから治療方針を提示します。患者さんもご自身の進行度と次の項で示す「2. 各進行度での治療法」を知っておくと医師の話も理解しやすいと思います。
表1は米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)という組織が提唱している前立腺がんの進行度(リスク分類)の2016年版です。提唱されている分類はいくつかあり、また時代が経るにつれて細分化してきていますが、日本においてもこの分類に基づいて進行度を考えることが多いため、参考になると思います。ご自身がどのリスクにあたるかを知るには、①リンパ節や他の臓器への転移の有無、②T分類(前立腺局所におけるがんの広がり)、③生検結果(グリソンスコア)、④PSA値が必要です。通常は生検で前立腺がんの存在が確定された後に画像診断で転移の有無とT分類を検査しますので、画像診断の結果をこれから聞く患者さんは、診察の際にご確認ください。

超低リスク

※PSA監視療法:PSA測定と生検を定期的に行い、進行したと判断されるまで治療を行わない待機療法
#経過観察:症状が出現した場合や、症状が出現しそうだと判断された場合に緩和療法を行う治療方針
*手術所見:断端陽性(癌の残存)や前立線被膜を越えた進展、精嚢浸潤、術後PSAが下がりきらない、リンパ節転移陽性などの望ましくない所見

低リスク

※PSA監視療法:PSA測定と生検を定期的に行い、進行したと判断されるまで治療を行わない待機療法
#経過観察:症状が出現した場合や、症状が出現しそうだと判断された場合に緩和療法を行う治療方針
*手術所見:断端陽性(癌の残存)や前立線被膜を越えた進展、精嚢浸潤、術後PSAが下がりきらない、リンパ節転移陽性などの望ましくない所見

中間リスク

#経過観察:症状が出現した場合や、症状が出現しそうだと判断された場合に緩和療法を行う治療方針
*手術所見:断端陽性(癌の残存)や前立線被膜を越えた進展、精嚢浸潤、術後PSAが下がりきらない、リンパ節転移陽性などの望ましくない所見

高リスク

*手術所見:断端陽性(癌の残存)や前立線被膜を越えた進展、精嚢浸潤、術後PSAが下がりきらない、リンパ節転移陽性などの望ましくない所見

超高リスク

*手術所見:断端陽性(癌の残存)や前立線被膜を越えた進展、精嚢浸潤、術後PSAが下がりきらない、リンパ節転移陽性などの望ましくない所見

骨盤リンパ節転移のある患者さん、遠隔転移のある患者さん

図5 各リスクで選択できる治療法

図5は「1.進行度の把握」で紹介したNCCNガイドライン 2016年 version 2で記載されている各リスクにおける治療の選択肢です。他の癌腫では「最初に勧めるべき治療は○○○で、その適応がなければ二番目に勧めるべき治療は△△△、その次は・・・」と提示される治療法に順番があることも多いのですが、前立腺がんの治療における大きな特徴は、同等に勧められる治療法が複数あることです。このことが患者さんを悩ませる原因の1つになっていると想像します。早期で発見された場合、期待される余命によってはすぐに放射線治療や手術をしない方針も取り得えますし、待機的な治療が勧められない進行度の患者さんにおいても、1日を争って早く治療を開始しなければならない性質の癌ではありません。医師と十分相談をせずにいたずらに月日だけが過ぎることは望ましくありませんが、提示された治療方針の中でどれが自分に合っているか決めかねるようであれば、各治療法でのスケジュールや副作用等を聞いて一度自宅に持ち帰るのも良いと思います。日常生活や仕事でご自身が大事に思っていることを整理して、ライフスタイルに合った治療法をじっくり考えてみましょう。

放射線治療は、施設によって可能な照射法や治療ポリシーが異なることがありますので、現在かかっている泌尿器科医だけでなく放射線治療医とも話をする機会を作ってもらうとよいと思います。一方、手術では、術後に放射線治療を追加する必要があることもありますので、その見込みを泌尿器科医に聞いておくと治療方針を考える際の参考になるでしょう。ただし、実際の診療ではガイドラインを頭に入れながらも、図には記載されていない様々な適応条件などを基に治療法を提示しますので、図に挙がっている治療法全てがご自身に適応となるわけではない点にご注意ください。

また、図5は初めて前立腺がんと診断された場合の治療選択肢で、再発時の選択肢は異なります。例えば、手術後に局所再発(前立腺摘出部から再発)の可能性が高いと判断された場合は32~35回(6週半~7週、64~70グレイ)の外部放射線療法を行うことがあります。一方、放射線治療後に局所再発が指摘された場合、小線源治療の技術に習熟した病院のなかには救済小線源治療を行う施設があります。救済小線源治療は具体的な適応や治療ポリシー等を世界中の研究者が模索している段階ですので、相談は実際の診察でお受けします。

わたしたちの治療方針